身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「星の女神を手中にするのは王家の悲願。巡り巡る時の中で、いつの日か、星の女神は再び蘇る。その時こそ王家の悲願を叶える時。王家の男児は幼少時から刷り込みのように聞かされて育つ。貴方の大切な養い子は女神である事を否定しているそうだけど、ここでその真偽は重要じゃない。外見的な条件が一致して、誰の目にも女神と認知されるなら、それはもう女神に他ならない。……馬鹿馬鹿しいって、私はずっと思っていたんだ。なのにまさか、この一節が父と私の代に現実のものとなろうとは、とんだ皮肉だよ」
最後の言葉は、俺達に言い聞かせる意図ではなかったようで、王太子殿下は自嘲気味に言い捨てた。
「王太子殿下、王家の悲願と言いながら、貴方が星の女神を彷彿とさせる少女を、みすみす我らの手に渡そうとするのはどうしてでしょう?」
「言ったろう? 決心がついたんだ。父の背中も、王家の呪縛も越えてゆく、その決心がね。星の女神への妄執は、私の代で断ち切る。父には、それが出来ない。父は祖父の悪政や、権力に物を言わせた傍若無人を間近に見てきた。ねぇブロード将軍、貴方は僕の祖父、前国王陛下を知っている?」
「いえ、私が将軍就任時は既に前陛下は身罷って久しく、詳しくは存知あげません」
悪評を知らぬ訳はないが、敢えて言葉を濁した。そんな俺に、王太子殿下はただ小さく頷いてみせた。