身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「……ブロード将軍、慰めは不要だ。それに今回の一件は大きな貸しだ。……ブロード将軍、この後は私に仕えよ」
凛と顔を上げた王太子は俺の手を振り払い、射抜くような目で俺を見上げて告げた。
「父は元老院の制止を無視し、自らの一存で妃らとの離縁に踏み切った、これは暴挙だ。特に、離縁を言い渡した側妃の一人は、隣国ブレンボ公国王家の血を引く姫だ。これには隣国ブレンボ公国が黙っていまい。父は自ら虎の尾を踏む所業を犯した。王として、父はもう終わりだ。私が父に代わり、王位を継承する」
強い決意の滲む言葉。
「私は父とは違う。私は父の治世を評価はしているが、その強引な手法には必ずしも賛同出来ない。私は隣国ブレンボ公国との戦を望まない。これ以上ブレンボ公国と拗れる前、慰謝料の名目で両国が所有権を主張し、睨み合いを続けてきた国境の地の権利を譲り渡そうと考えている。領地を明け渡す事を推してでも、戦争を回避する事が、しいては我が国の国益に繋がると、私は考える。ブレンボ公国との交渉では、貴方に特使を頼みたい」