身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
……無体な仕打ちを受けているのは私。なのに何故、それを強いる側のザイード王がそんな目を私に向けるのか……。
「レーナ、私は人形のような其方が欲しい訳ではない」
ザイード王の言葉ははじめ、正しく意味を結ばなかった。
ザイード王が私に手を差し伸ばす。……その手は再び顎を捉え、私の唇を貪るのだろうか?
けれどザイード王の手はゆっくりと私の頬に触れ、そうして折り曲げた指先で目尻の辺りをひと撫でして離れていった。
強要するじゃない、まるで許しを請うみたいな、そんな触れ方だった。
……一体、ザイード王は私に何を望もうというのか。
「微笑んで欲しい」
?
見るともなしにぼんやりと見上げていれば、まるで私の疑問を汲み取ったかのように、ザイード王が口を開いた。
「……いや、微笑みばかりじゃない。役所で向かい合った時のように、不信感に眉を顰めてもいい。手持ちが無いと不安げに見上げたあの表情でもいい。私を、見て欲しい」
ザイード王からもたらされたのは、まさかの懇願。