身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
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俄かには、信じる事が出来なかった。
どうして、……あぁ、もしかしてこれは私の思慕が見せた幻?
「レーナ!!」
幻かと思ったブロードさんが、声高に私の名前を叫ぶ。そうして次の瞬間には、私の体はふわりと宙に浮いていた。
声も、力強く私を抱き締める腕の感触も、伝わる温もりも、どれもが求めてやまなかったブロードさんその人のものに違いなかった。
だけど私の唇は、切れ切れに短い呼気を吐き出すばかり。人は本当の歓喜を目の当たりにした時、言葉なんて出ないのだと、身を以って知った。
私は出ない声の代わりに、震える手で必死にブロードさんの逞しい肩に縋った。
「レーナ、待たせてすまなかった! もう、大丈夫だ!」
苦しいくらいの力で抱き締められて、ブロードさんの温度と感触に包まれる。
深い安堵が広がって、張り詰めていた糸は途切れた。
「っっ、ブロードさんっ! ブロードさん!!」