身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 私を見つめるブロードさんの瞳。苦渋の滲むその瞳に、ブロードさんがどんなにか私を案じてくれていたかが、沁みるように伝わる。

「ブロードさん、大丈夫です。ブロードさんが心配するような事は、何も……」
「! そうか!!」
「っ!」

 息つけぬ苦しいくらいの抱擁に、湧き上がるのは歓喜。

「……よかった。レーナ、本当によかった」

 耳元に落ちたブロードさんの声は、くぐもって詰まっていた。私を抱き締めるブロードさんの手は、細かく震えていた。

 震えるブロードさんの腕に抱かれながら、私の胸の中、ひとつの想いが実を結ぶ。

 私はブロードさんに、恋をしている。当初抱いていた尊敬や敬愛の念は途中から、恋心に姿を変えた。
 ブロードさんの大きな懐に、まるで宝物でも守るみたいな慎重さで抱き締められて、私という存在がとても大切で愛しいもののように思えた。

 今この瞬間、これまで根底に持っていた劣等感や焦燥は霧散していた。

 私を形作る幾億の細胞の全てが、ブロードさんへの愛で新しく生まれ変わる。そうして他でないブロードさんその人が、誰よりも何よりも、私自身よりも一層に愛おしい。


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