身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 女装姿のアボット君にばかり目がいっていたのだが、アボット君の隣には初めて見る少年の姿があった。
 声は少年が上げたもので、その目は花壇で花々の手入れをしていた女性を見つめていた。

「後ろ姿でだって、僕には分かる。母さんだろう?」

 少年は、女性の背中に向かって語り掛けた。
 女性がゆっくりと振り返る。少年と、女性の視線が絡む。

「そんなふうに母さんが丹精を尽くして奥殿を整えたって、父さんは母さんを顧みない。事実、父さんはこうして母さんが残っている事に気付こうともせず、その脇を悠々と通り過ぎる。それ以前に、星の女神の妄執に魅せられて、長年連れ添った母さんをいとも簡単に離縁して。そんな仕打ちをされてもまだ、父さんを想うの?」

 女性はスッと立ち上がると、少年の前へと歩み寄る。

「……ザナンド。私は王妃として立った時に誓ったの、何があっても私が隣で支えようって。だからこれからも、支えていくわ」

 女性と少年の正体に、愕然とした。


< 227 / 263 >

この作品をシェア

pagetop