身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「レーナさん、だったかしら? 貴方、男を見る確かな目を持っていて良かったわよ? ブロード将軍を選んで大正解。私なんて見る目がなかったものだから、こうして苦労の連続」
王妃様は冗談めかして言いながら、コロコロと笑った。
「夫のザイードがすまなかったわ、どうかお元気でね?」
そうしてスッと表情を引き締めると、最後をこう締めくくった。
夫の行動を詫びてみせるその姿からは、妻としての矜持が垣間見えた。
「……王妃様、私、文句のひとつも言ってから行きます」
「え?」
「「レーナ!?」」
私の言葉に、王妃様が目を見開いた。
すぐに私を連れて出ようと思っていただろうブロードさんもアボット君も、ギョッとしたように目を剥いた。
「頬っぺたひっぱたいて、思いっきり説教してから行きます。だけど説教は、私の誘拐でも、それが招いた混乱に関してでもなく、こんなに素敵な王妃様を一方的に離縁した事にです」