身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「レーナ付きの侍女長の事は心配いらないわ。そもそも離縁を言い渡された私がいまだここに残れているのは、実は侍女長の力添えがあってなの。私は離縁こそ言い渡されたけど、法手続きはまだ済んでいない。侍女長は、私が王妃として立ち続ける事に一縷の望みを賭けてくれていた」

「王妃様……」

 結果として、王妃様は王妃として立ち続ける事はない。けれど今後は王太后と立場を変えて、ランドーラ王国のために奮闘する事になるだろう。

「さ、これ以上中庭で騒いでいると流石に目立つわ。私とザナンドは別室で待つわ。ブロード将軍たちはレーナの居室で大丈夫よ。侍女長が、医師を手配させたとこちらからも周知させておくから」

 王妃様は最後にもう一度私を抱き締めて、抱擁を解いた。
 ここで王妃様達とは別れ、それぞれ居室へと引き上げた。



 ……だけどこの日、どんなに待ってもザイード王が奥殿に、いや、王宮に戻ってくる事はなかった。
 代わりに侍女長からもたらされたのは、耳を疑う伝令だった。






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