身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい



 そうして一通り歓待を告げた侍女達が持ち場に戻り、やっと居間に静けさが訪れた。

「レーナ?」

 ところがレーナまでもが口を噤み、静かに俯いてしまった。
 侍女達からの歓迎を笑顔で受けていたレーナ。なによりレーナにとって、実に五日ぶりの帰宅。けれど帰宅を叶えたレーナの表情は、晴れなかった。

「……ブロードさん、ザイード王は大丈夫でしょうか?」

 ポツリとしたレーナの呟き。

「ザイード王には選りすぐりの医師達が処置にあっている。何があろう筈もない」

 告げた言葉に嘘はない。ザイード王は重傷を負ってはいるが、命に別状はないと聞く。

 しかし命を繋いでも、身体機能を著しく損なったザイード王が、今後表舞台で辣腕を揮う日は訪れないだろう。


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