身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
ただし、それとて見方ひとつ。今回の一件により、ザイード王は息子に失脚させられるという最悪のシナリオは避ける事が出来たのだ。
「そうですよね……」
ザイード王の身を案じて表情を曇らせるレーナを横目に、湧き上がる嫉妬心は隠しようがなかった。
「それよりもレーナ、夕食の前に湯を浴びてきてはどうだ? 見知らぬ場所でずっと緊張のし通しだったのではないか? 温かな湯は心と体を解してくれるぞ」
「ありがとうございます。それじゃ、お言葉に甘えてそうさせてもらおうかな」
風呂の件で、レーナはふわりと綻ぶように笑った。この笑顔を、レーナはあるいはザイード王にも向けたのだろうか?
レーナがザイード王に向ける思い。たとえそれが恋情とは別の感情であろうとも、レーナの心の一部を占めるザイード王への嫉妬の炎は、勢いを強くするばかりだった。
俺自身、己がこんなにも独占欲を胸に飼っていた事に驚きは隠せなかった。