身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
チャールズが丁寧な礼と共に居間を出る。一人になった居間で、俺は足を投げ出してソファに腰掛けた。
そうすれば思い返すのはやはり、ザイード王の事。
レーナはザイード王の想いを妄執と一蹴した。
一端はそうかもしれない。けれど俺にはそれが全てとは思えなかった。
切欠は星の女神への妄執であったとしても、ザイード王がレーナを尊重した扱いを終始一貫したその裏には、他ならぬレーナへの恋心があったのではないだろうか。
男に攫われたと聞かされれば、十人中十人がまず一番に下世話な心配を巡らせる。しかもそれは大概において、下世話な想像のままでは終わらない。
けれどザイード王は力で捻じ伏せて奪う事をしなかった。
……ならば、求めたのはレーナの心。
ザイード王はレーナを尊重する事で、レーナの心がいつか己に向く事に望みを託した。体よりももっと、レーナを深く重く求めたのだ。
……一国の王といえど、真実の愛を前にすれば、ただ頭を垂れて乞うしかない。
そうして俺もまた、レーナの愛を乞う男の一人。
俺はなんとしても、レーナとの相愛を手に入れる。