身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
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ほどなくすると、俺は居間から食堂に場所を移り、先に夕食の席に着いてレーナを待った。ゆったりと湯を使っているのだろう、レーナはなかなか現れなかった。
けれどレーナを待つ時間を、まるで苦痛とは思わなかった。レーナが何処にいるとも知れない状況とは訳が違う。今、同じ屋敷内にレーナがいる。同じ場所で同じ時間を共有する、こんな当たり前が、何よりも嬉しかった。
「ブロードさん、お待たせしてすみません。あまりにも気持ちよくて、つい長湯をしてしまいました」
食堂の扉が侍女の手で開かれると、遠慮がちにレーナが顔を覗かせた。
「いいや。ゆっくり出来たようでよかった」
湯を使い、桜色に頬を染めたレーナがいそいそと向かいの席に着く。
レーナの着席を見計らい、すぐに前菜が供された。
「……すまないが、今日は全て並べてしまってくれ」
給仕の侍女に、常はしない指示をした。やっと屋敷に戻ったレーナと、二人きりの時間を持ちたかった。