身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 ならばランドーラ王国の治安を統括する立場にある俺が、犯罪の芽を未然に摘むべく一層励めばいい。それこそが、俺の仕事に他ならない。

「ブロードさん……」

 レーナは目を細め、感じ入った様子で俺の言葉に聞き言っていた。

「だからレーナ、レーナの行きたいところに足を運べばいい。もちろん暗い時間や、裏通りは避けて然るべきだが、日中の時間はこれまで通りだ。それでも万が一身の危険を感じれば、早急に周囲の人間に声を上げてくれ」

「はい。私もこれまで以上に周囲に目を配って、慎重な行動を心がけます」

「ああ、そうしてくれ。それから、いたずらに不安を煽る事もないと思い、患者と教会にはレーナは体調不良でしばらく休むとだけ伝えてある。だから出向いた時は体調が回復したと、そう伝えればいい」

「ブロードさん、細やかな気遣いを本当にありがとうございます。私、また明日から患者さんのところに通います。それに、教会にも新しい宿題を持って行ってきます」

 レーナの笑みを目にすれば、一層身が引き締まる思いがした。この笑みを守る為に、俺は出来得る全ての手を尽くす。


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