身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 これで会話は一旦途切れた。けれど沈黙もまるで気詰まりには感じない。むしろ、ゆったりとした時間の流れが心地いいと思えた。

「ブロードさん、さっきの話なんですけど」

 そうして粗方を食べ終えたところで、レーナが静かに切り出した。

「ブロードさんが言った、我が家に勝るものはない、ってさっきの言葉」
「うん?」

「広義では当たっていますが、私には少し、肉付けが足りません」

 向かいから煌く黒曜石の瞳が、俺を見つめていた。

 その瞳のあまりの美しさに、思わず息を呑んだ。俺は高鳴る鼓動を抑えつけ、続く言葉に耳を傾けた。

「私は家という場所だけでは不満です。そこにブロードさんが居なければ、私は嫌です。私はブロードさんのいるところがいい……。私は、ブロードさんと一緒がいいです」

 もたらされた言葉の意味。もしかすればその重みは、俺とレーナで隔たりがあるかもしれない。

 けれど今の言葉は、幾重にも秘してきた俺の想いを溢れさせるには十分だった。

 もう、胸の中には納まらない。


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