身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 歓喜は奔流となって全身を駆け巡る。狂おしいほどの愛しさに突き動かされ、気付けばレーナを腕に掻き抱いていた。

「……でもねブロードさん、本音を言えば自信なんてないんです。こんな私にブロードさんがいつか愛想をつかしてしまって、また一人になってしまうんじゃないかって、そんな恐ろしさも感じています」

 不安気に俺を見上げ、レーナが紡ぐ一語一語。その衝撃に目を瞠る。

 レーナの口から飛び出したのは、あまりにも予想外の内容だった。同時にそれは、身ひとつで見知らぬ世界に投げ出されたレーナの切ない心の内を、如実に表す言葉だと思った。

 この瞬間、俺の胸に庇護欲や独占欲、それらを上回る圧倒的な愛おしさ、あらゆる感情が木霊する。

「レーナ、それは違う」

 俺はレーナの震える唇に人差し指を添え、ゆっくりと首を横に振った。

「たとえレーナが俺を厭う日が来ようとも、俺のレーナへの愛が消える日など訪れない」


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