身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

『実を言えば、わらわも迷いがあったんじゃ。其方が帰還を望んでいると思えばこそ胸に秘めたのじゃが、其方が帰還を望まぬのなら、わらわも躊躇なく踏み出せるというものじゃ!』

 吹っ切れたような笑みで女神が言い切る。

 もしかすれば女神にも、日本で生活する中で、切り離したくない何某かの縁が出来たのだろうか? 仮にそうだとすれば、人も神も恋を前に悩むその心は、同じなのかもしれない。

『そうじゃそうじゃ、残るなら引き続き、其方に星の女神を頼むぞ?』

 星の女神を、頼む!?
 だけど続く女神の言葉に、私は思わず目を剥いた。

「ちょっと待ってください! それはどういう意味ですか!?」

 いや、そもそも「引き続き」ってなに? 私はこの地に来てから今の今まで、何もしてはいない!
 焦る私を余所に、女神は笑みを深くした。

『うん? これまで通りに、ただこの地にあればいいんじゃ。わらわという存在は、其方の国の言葉で言うところの、氏神に近い。わらわの存在がランドーラ王国の守護となっておるのじゃ。要は、どんなにむかっ腹立とうとも、この地を見捨てて出なければいいんじゃ』


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