身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
ブロードさんとこの地で生きていけるなら、たとえどんな困難な要求だろうと、受け入れない訳がなかった。
けれど女神の口から語られたのは、予想よりも遥かにざっくりとした役目だった。
「……本当に、いるだけでいいんですね?」
『そう言うておろう? わらわも初代王への腹いせに、何度出奔を考えたかしれん。結局思いとどまって、ずっと不貞寝を決め込んどった。じゃがこの通り、何をせずとも国は傾いておらんじゃろ? だから其方もこの地にいるだけで大丈夫じゃ』
女神は最初の時に「眠るのに厭きた」と言っていた。しかしまさか、建国の初代王の時代からずっと眠っていたというのは、地味に驚く。
『なーに、其方の今生など長い歴史で見れば、瞬きをするくらい一瞬の事じゃ。ほんの一時入れ替わったからと、何があろうはずもない。では、達者であれよ』
女神は言い終えると、その身にキラキラとした光の粒子を纏わせた。