身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「……ブロード様、器物損壊、略取誘拐、この短時間に随分とやらかしたんじゃないですか? まぁ、確かにこんなに可愛い子見つけたら、攫いたくなる気持ちも分からなくはないですけどね」
うんうんと顔を頷かせながら、アボットは頓珍漢な内容を至極真剣に言ってみせた。
「アボット、俺は何もやらかしてはいない。毎度のことだが、その飛躍しすぎな発想は何とかならんのか。全く、仮にも主である俺によくもそんな疑念を向けられたものだ……奢ってやらんぞ」
俺の言葉に、アボットは青褪めた。
「いえ、想像の限界を超える状況を前に、現実逃避をしただけで、本気で思っちゃないです。……だから、奢って下さい」
アボット自身が口にした『想像の限界を超える状況』。けれどその状況に際しても、アボットはどこまでも平常運転で、飄々とした態度を崩さない。
まさにこの強心臓が、俺がアボットを高く買っている所以だった。
しかし最後の『奢ってくれ』は、相変わらずの悲壮感に溢れている。