身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
女神との別れの時が迫っていた。
「女神様! 最後にひとつだけお願いをさせて下さい!」
『うん?』
私は、今まさに消え行こうとしていた女神の袖を鷲塚んだ。光を纏い、半分消えかかった状態の女神が、私を振り返る。
「どうか両親と兄達に、愛していると伝えて下さい」
『わらわの言葉として伝えるしか出来んが良いか?』
「はい。だって、あっちでは女神様が、怜那だから。怜那である女神様から伝えて下さい」
『よいぞ。お安い御用じゃ、ではな!』
鷹揚に頷くと、晴れやかな笑みの残像を残し、今度こそ女神は一瞬で姿を消した。
「女神様、私をブロードさんと出会わせてくれてありがとうございます。女神様も、お達者で」
光の残滓に向けた呟きが、果たして女神の耳に届いたのかどうかは分からない。