身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 私の意思なんてお構いなしに、女神の訪れはいつだって突然。けれどこの後、女神が私の前に現れる事はない。次に女神が現れる時は、私がこの地で天寿を全うした時だ……。

 これが最後と思えば、ほんの少し寂寥感が胸を過ぎった。

 女神とのはじまりは突然の上に一方的で、私に拒否権なんてなかった。

 だけど今は、望んで身代わりを女神に願った。そうして女神は私の願いを受け入れて、私はこのままこの地で、身代わりの女神を生きる。

 これは、他ならない私自身がブロードさんを選んだという事で、同時に私が「怜那」としての人生と決別したという事でもある。

 そっと、瞼を閉じる。目尻から、涙がポロリと頬を伝った。熱い涙の雫には、嬉しさと悲しさのふたつの感情が入り混じる。

 けれど朝になれば、私は一番にブロードさんに、女神との会話の一言一句を余さずに伝える。そうしてブロードさんと共に、女神に赦されたこの地での生を喜び合う。

 だから、今は……。


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