身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 閉じた瞼の裏に、願いは形となって結ばれた。記憶の中の両親と兄達の姿が、鮮やかに浮かび上がる。両親も兄達も、穏やかな笑みをたたえていた。実体はなく、会話だって成立しない。だけど確かな団らんの時を、私は満喫していた。

 夜明けまで、私は噛みしめるように家族との時間を過ごした。

「……お父さんお母さん、私、とっても大切な人に出会えたの。二人に負けない、素敵な夫婦になるよ」

 瞑った瞼越しに差し込む朝日の眩しさを感じ、私はついに切り出した。

 お父さんとお母さんが、微笑んで頷いた。

「悟兄さん、学兄さん、私、教会の先生になるんだよ。日本で目指してたお医者さんじゃなかったけど、心から目指したい夢に出会えたの。だからやっぱり、ほどほどじゃなくて、精一杯頑張るよ」

 兄達も、微笑んで頷く。だけど見る間に兄達が、その横の両親が、霞む。

 四人の輪郭が、あやふやになって、空気に溶ける。

「お父さん、お母さん、悟兄さん、学兄さん、皆は私の自慢の家族だよ。だけど私の事も、ほんのちょっとだけ自慢に思ってもらえたら嬉しいな。ずっとずっと、皆が大好き」

 私の言葉に、四人が笑みを深くしたように感じた。


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