身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい




「ドリアス牧師! お願いですから待ってください! 俺、ブロード様に夕飯奢ってもらえなくなっちゃいます!」

 ……どうやらアボットでは、抑えきれなかったとみえる。

「知った事か、この馬鹿者! 何が誤って割ってしまっただ! ぶつかったくらいで石膏はああも粉々にはならんわ! 儂に嘘八百は通用せん。女神像を弁済してもらってハイお終いと、そう物事は簡単には済ませられんぞ! 儂が直接ブロード坊ちゃんに問い質してくれるわ!」

 宿を目前に、背後から聞こえてくるアボットとドリアス牧師の声に、ため息を吐いた。

「うわっ、ドリアス牧師ほんと待ってください! 俺もう、こんな後期高齢者いやだ」
「ん!? 誰が後期高齢者じゃと!?」
「わぁああっ!」

 ……なんと騒々しい。

 ともあれ、二人があれやこれやと取り込んでいる内に、行ってしまうに限る。なんとか気を取り直した俺は無視を決め込み、そのまま馬を進めた。

「おお! おったおった、やーっと追いついたわい! もう逃がさんぞ!」

 とはいえ女神様への負担を考えれば、悪戯に速度を上げるのも難しい。そうこうしている内に、ドリアス牧師が目聡く前を行く俺の姿を捉えたようだった。


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