身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「ブロード坊ちゃん、儂ゃ誤魔化されやせんぞ!? 一体何を隠そうとしておる!?」
宿の厩舎の前で、俺が女神様と共に馬を下りていると、追いついたドリアス牧師も馬を止めた。
そのままドリアス牧師は転がるように馬を下りると、言葉の通り俺を逃がさぬよう、ガッチリと俺のマントを引っ掴んで睨みをきかせた。
「ブロード様申し訳ありません~! だけどドリアス牧師の勢い、とても後期高齢者のそれじゃなくって……」
一歩遅れてやってきたアボットは、俺を見るなり泣きそうに顔を歪めた。そうしてアボットの謝罪の最後には、『だから奢ってくれ』と、そんな台詞が聞こえてくるようだった。
「分かっている。難儀な役どころを押し付けてすまなかったな」
「ブロード様~!」
「……ブロード坊ちゃん、こりゃあ一体……!!」
女神様を食い入るように見つめたドリアス牧師が、震える声を上げた。
「シィッ、起きてしまう。ドリアス牧師、話は客室でしよう」