身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 幼い当時も力を身に付ける為と、必死で歯を食いしばって耐えていた。

 それでもどうしても辛い時は、女神像の膝元で一人、泣き明かした夜もある。

 祖父が悪い訳ではない。けれどこの場所は、どうしたって幼かった頃の感傷を思い出させる。

「……だが、そうだな。今度、一人の時に手土産でも持って、ゆっくり訪ねてみるか」

 しかし、それももう遠い昔の事。祖父に怯えて過ごした幼い俺は、もういない。
 今ならば祖父と対等に向かい合い、過ぎし日々を笑って語らう事も出来る。

「あ、なるほど! 久しぶりに訪ねるのに手ぶらじゃ、恰好つかないですもんね~。それ、分かりますよー! 俺もたまの帰省の時、どうしても財布がピンチで、手ぶらだったんです。そうしたら案の定、弟妹から総スカン食らって泣いたもんです」

 アボットは手土産の件で、アボットなりの納得をしてみせたようだった。事実とは少々乖離があるが、この件に関して俺に否やはない。

 アボットの話に共感は出来んが、同情はするな……。少なくとも祖父が、空手を理由に俺を蔑ろにする事は、まずあり得ない。

「アボット、心配せずとも宿代は経費で落とす。食事は俺が奢ってやる。お前の懐は痛まんから安心しろ」
「へへっ、そりゃどうも」

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