身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「お腹すいたなぁ。ほんとなら今頃、とっくに夕飯にありついていたはずなのに」
「儂にそんな目を向けたとて、其方の腹の事情など知らんわ!」
寝室と続き間の居間から、扉越しに女神様の寝室まで耳障りな会話が響く。
……女神様が起きてしまったらどうしてくれる。
俺はひとつ舌打ちし、薄く扉を空けて女神様の寝室を出た。
「アボット、ドリアス牧師、声を低くしてくれないか? 病人が寝ているんだ」
グゥゥウウウウウ~~。
すると、アボットから腹の虫が大音量で鳴り響いた。
俺は苦笑して、懐から財布を取り出す。
「アボット、これで下の食堂で夕食を食ってきてくれ」
紙幣を一枚抜き取って、アボットの手に握らせる。
「え? でも、ブロード様は……」
「俺はドリアス牧師と少し話す。飯は後で適当にとる、だから遠慮せず行ってこい。腹、減っているんだろう?」
一瞬の逡巡の後、アボットは足取り軽く食堂に向かった。
「じゃ、じゃあいってきます! ブロード様ありがとうございます!」