身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 ドリアス牧師は今でこそ地方教会の牧師に甘んじているが、元は王宮付きの書記官をしていた。

 その知識は多岐に渡り、歴史や地学天文、果ては地域の伝承の類まであらゆる分野に造詣が深い。

「礼拝堂を出たところで、俺は夜空に流星を見つけ足を止めた。そして長い流星が消えた時、背後に小さな物音を聞いて振り返れば、礼拝堂の砕け散った石膏の上に彼女がいた」

 俺は事実のみを忠実に告げた。

 するとドリアス牧師は、大きく一息吐き出した。

「考えられる可能性は二つしかあるまい」

 俺の目を静かに見つめ、ドリアス牧師がゆっくりと語る。

「まず、ブレンボ公国の山岳部族の娘が、其方の懐に入り込もうとほんの一瞬の隙をついた」

 ドリアス牧師の示した可能性に、一気に眉間に皺が寄る。

 可能性としては無しではない、けれど事実はそうではない!
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