身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 彼女が刺客など、あり得る訳がなかった。

「まぁまぁ、一般的な可能性の話だ。とはいえ、ブレンボ公国の山岳民族は浅黒い肌にガッシリした骨格を持つから、外見的な特徴が少し異なりそうだ」

 表情を険しくした俺に、ドリアス牧師は苦笑した。

「後は、言わずもがな。彼女が星の女神という可能性だな。のうブロード坊ちゃん、建国神話を知っておるか?」

 ドリアス牧師は唐突に問いかけた。

「知らない訳があるか」

 ランドーラの国民であれば幼子でも知るおとぎ話だ。

「流星と共に天から星の女神が舞い降り、荒涼とした乾いた大地に湧水と川を与えた。たちどころに大地は潤い、民は飛躍的に増えた。女神はまばらにあった民を纏め、一族の長を王に据えランドーラ王国を興した。王は星の女神を妃にし、ますます加護で栄えるランドーラ王国で末永く幸せに暮らしました、とこんな流れだったか?」

「まぁ大筋はあっておる。だが、実際は結末が違う。ちなみにそれを、おとぎ話と思っているなら大間違いだぞ。空想でもなんでもない、女神は実在した、実話だ」

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 ドリアス牧師からもたらされたのは、思いもよらない神話の真実。
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