身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「これは一般には知られておらんが、星の女神というのは、あの嬢ちゃんのように黒髪黒目をしておった。初代ランドーラ王は女神を王妃に据えようとして振られておる。だからランドーラの王家にも国民にも黒は混じっていない。そんな経緯で黒というのは神聖視される一方、王家連中は暗褐色の髪や瞳を厭うんだ。昔、黒髪黒目の星の女神に袖にされたトラウマのようなものだな」

 告げられた非現実的な内容は、けれど一笑に付す事が出来ない。

 彼女がここに存在する事実こそが、それを裏付ける。

「ザイード王が彼女の存在を知れば、どうする?」

 俺も役職柄、幾度かザイード王とは顔を合わせている。しかしいつも薄い笑みを浮かべた彼の方の心の内など、まるで想像がつかなかった。

「さて……。あの陛下の考えはまるっきり読めぬ」

 ドリアス牧師はしばしの逡巡の後、大仰に肩を竦めてみせた。
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