身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「どちらにせよ、星の女神の再来かとの真偽はさておき、黒髪黒目の娘の存在、王に奏上しない訳にはゆかぬだろう」
ドリアス牧師の言はもっともで、報せぬという選択肢はない。……ないのだが、何故か胸騒ぎがした。
太陽王との異名を冠するザイード王は、強く堅固な施策でもってランドーラ王国を富国へと導く、まさしく賢王。
なのに彼の方を前にした時、俺はどうしても薄ら寒い思いがするのだ。彼の方の碧の瞳に底冷えするような、狂気を感じてしまう。
「……ちなみにドリアス牧師、星の女神は王の求婚を断り、その後はどうした?」
俺はこれまで将軍という役職柄、他国も含め、多くの権力者を目にしてきた。不敬は重々承知だが、ザイード王の目は成熟した大国の王というよりは、下剋上の野心に燃える賤族の長にこそ通じる物を見てしまう。
ともあれ、人の本質などそうそう読み解けるものではないし、俺の思い違いという事も重々ありうる。
「実は、星の女神は求婚を断った後……」
カタンッーー。
その時、扉越しの女神様の寝室から、物音がした。