身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
アボットは食事を奢るの件で満面の笑みになった。分かりやすい男だ。
アボットは優秀な側近なのだが、ひとつ難点を挙げるとするとかなり金に煩い。
率直に言えば、ケチなのだ。
とは言えアボットの肩には母と弟妹の三人の生活がかかっており、アボットは給金の殆どを実家に仕送りしている。まだ十六歳という若さでありながら、なかなか見上げた男なのだ。
その時、宵闇に遠く、教会の尖塔が浮かぶのが見えた。
「……アボット、すまんが少し寄り道をしても構わんか?」
「もちろん!」
俺はアボットの了承を得て、馬首を教会に向けた。
「え? ブロード様が寄るのってあの教会ですか!? 信仰心のシの字も持たないブロード様がどんな風の吹き回しですかっ!?」
率直なアボットの物言いに苦笑が漏れた。
俺自身、特段信仰心に厚い訳ではない。
事実この地を離れてからは、すっかり足が遠のいている。
けれど幼少のみぎり、たまに訪れた母は、必ず俺の手を引いて、星の女神を称えるこの教会に足を運んだ。
やがて俺は、母がいなくとも教会に足を運ぶようになったが、それは信仰とは別の理由からだった。