身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「どうしてこんな危険な真似を!?」
女神様の手が、もがくように宙を掻く。
その手ごと、細い体を逃がさぬよう、グッと腕に抱き締めた。そうすれば、女神様の取るに足らない抵抗は、容易に封じ込めた。
女神様は虚ろな目で、何事かうわ言を呟いていた。
「……あぁ、そっか。これは私への罰なんだ」
「女神様?」
女神様は緩慢な動きで、周囲に首を巡らせる。すると、女神様の目が俺の姿を捉えた。
女神様の目は、俺を映している。けれど俺を見てはいない。俺を取り越したその先に、心を飛ばしていた。
「ふふふっ……私、馬鹿だぁ……。逃げ出す事に活路を見いだして……罰が当たったんだ。だけど本気でさよならなんて、したい訳がないじゃないっ……お母さん! お父さんっ! お兄ちゃんっ!! どうして、どうしてよっ……うっ、うぁぁっっ、っっ!」
「女神様、しっかりなさって下さい!」
「ぅぁあっっ!」
女神様の悲壮な叫びが響き渡る。