身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
 俺の情感を抉るように、女神様の感情が余さずに流れ込む。苦しみ、不安、怒り、心細さ、ありとあらゆる激情が俺に降り注ぐ。

 女神様を抱く腕に、力を篭めた。

「大丈夫です! 何も心配はいりません! お守りします。全てから、俺が女神様をお守りします!」
 
 俺の言葉に、女神様の肩が大きく跳ねた。漆黒の睫毛に縁どられた至高の黒が、見開かれる。 俺はその、あまりの美しさに見惚れた。

「……嘘よ」

 けれど続く女神様の言葉が、俺を正気に引き戻す。

「女神様?」

 女神様の双眸から、滂沱の涙が流れ落ちる。

 細い肩を震わせて、女神様は慟哭しながら、切れ切れに叫ぶ。

「だって、違うっ。私は、違う!! ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!」 

 女神様は壊れたように首を振る。

「女神様、何を謝るのですか?」

 女神様はひどく憔悴し、何かを恐れているようだった。

「私は、星の女神なんかじゃない!」

 一瞬、告げられた言葉の意味が、分からなかった。
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