身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「だから私には、なんの力もない! なんの加護も、私には授けられない! ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!」

 俄かには信じ難い、女神様の告白。

 けれど、あの状況で現れながら、女神様でないなどという事があり得るのだろうか?

「私は、星の女神に交換を言い渡されて、気付いた時にはもう、ここにいた! 本物の星の女神は私になって、私として過ごしてるっ! だから私は、女神じゃない! 期待に応えられなくてごめんなさい! がっかりさせて、ごめんなさいっ!!」

 取り乱しながら、切れ切れに告げられる苦しい心の吐露に、胸が詰まった。

 女神が只人と交換し、入れ替わって過ごす。聞かされた荒唐無稽を、しかし虚言とは欠片も思わなかった。

 腕の中の少女が女神ではないという事実にも、落胆はまるでない。それどころか、少女がなんの制約も受けぬ自由の身である事は、純粋に嬉しいと思った。

 同時に、俺が勝手に星の女神と決めつけて、それにより、こんなにも少女を追い詰めてしまった事が苦しかった。
< 42 / 263 >

この作品をシェア

pagetop