身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
腕の中、少女が細い肩を震わせて嗚咽する。その肩が稚く儚げで、狂おしいくらいに俺の情感を刺激する。
「すまなかった。だが、もう心配いらない! 俺の早とちりで随分と気を揉ませてしまったが、期待に応えられないなどと、そんな心配は無用だ。もちろん俺は貴方が女神でなかったからと、がっかりもしていない」
突き動かされるようにきつく少女を抱き締めて、その耳元で含めるようにゆっくりと語る。
「女神だろうがなかろうが、関係ない。俺が、助けになる」
少女の目が、これ以上ないほどに見開かれた。美しい漆黒の瞳が落っこちてしまうんじゃないかと思った。
けれど実際に見開かれた目から零れ落ちたのは涙。水晶よりも透き通る、清らかな雫。
一滴だって散らせるのが惜しく、指先に掬い取る。
「……そんなの、おかしい」
けれど少女がふるふると首を振り、その動きに付随して幾筋もの滴りが同時に伝い落ちた。
「何がおかしい? 俺は何かおかしな事を言ったか?」
あぁ、なんと惜しい事を……。
「……私、何も返せない」
おかしな事を言う。
「俺は何の見返りも求めてはいない。ただ、見知らぬ場所で窮する貴方の助けになってやりたいと思っている」
いまだ不安気に俺を見上げる少女に向かって微笑んだ。
……あぁ、そうか。胸にストンと理解が下りる。
俺は女神だから大切なんじゃない。俺の腕の中で、不安に肩を震わせるこの稚い少女自身を、愛しいと思うのだ。