身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「ハハハハッ! ブロード坊ちゃん、なんとまぁ甲斐甲斐しい紳士になられて! ブッ、ブハハッ!」

 轟く笑い声の主に殺意が湧く。
 今の今まで、すっかりその存在を忘れていた。しかしこの場には、俺たちの他にドリアス牧師がいた!

「オイッ、ドリアス牧師!?」

 振り返れば案の定、ドリアス牧師が扉の前で腹を抱えて笑っていた。
 よりにもよって、今まさに少女が名乗ろうかというタイミングで、なんという事をしてくれる!

「かつてブロード坊ちゃんの塩対応に絶えられず涙を零した淑女らが見たら、臍を噛んで悔しがるに違いありませんぞ!」

 この上、ドリアス牧師は血迷った発言を繰り返す。

「ドリアス牧師、妙な物言いをするな!! 違うんだ、今のドリアス牧師の言葉は事実ではないから鵜呑みにしないでくれ……!」

 俺が慌てて取り成そうと振り返れば、少女が微かに口角を上げて笑っていた。
 ……まさか、ドリアス牧師のふざけた物言いが、少女の緊張の糸を解きほぐすのに一役買っていた。

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