身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい



***


 窓を開け放ち、身を乗り出したあの時、私は本気だった。

 けれど結果として、私はブロードさんによって命を繋ぎ、差し伸べられたブロードさんの手を取った。

 それは他ならない私自身が、ここでの生を選んだという事……。

 ソファの隣に座るブロードさんを、チラリと仰ぎ見る。

 ブロードさんは、不思議な人……。

 あれだけ私を星の女神と疑っていなかったはずなのに、私が女神じゃないと知っても、口調こそ敬語から若干砕けたものに変わったものの、その態度はまるで変わらない。

 ブロードさんからは、落胆のほんの欠片だって見つけだす事は出来なかった。

 ブロードさんが信頼に足る、誠実な人だというのは疑う余地もない。だけど初対面の私に、こんなによくしてくれるのはどうして?

「さてレーナ、これが周辺各国の地図だ」

 卓を挟んだ向かいに座るドリアス牧師が、懐から大判の紙を取り出して広げる。私は慌てて疑問を脇へ追いやって、卓上の地図に目線を移した。

「は、はい」

 なにより、どんなに考えたところで、この不思議に答えは出ないような気がしていた。
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