身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「ブロード様、ここによく来てたんですか?」
「あぁ、母が信心深くてな」
「なるほど~、信仰はお母上でしたか」
……いや、母もまた信心深いとは違うのか。
教会はきっと、母の心の拠り所であった。父に顧みられぬ母が、信仰に救いを見出した。
丈夫でなかった母が、帰省の際の教会通いだけは、どんなに体調が悪くとも譲らなかった。
『主人の心がまた私とブロードに戻ってまいりますように。また、私とブロードと三人で食事ができますように……』
隣りで聞く母の祈りが、苦しかった。
母の祈りを聞きながら、俺もまた星の女神に祈っていた。
『母さんは、俺が守る。父さんなんかいなくても、俺が母さんを守る。その為の力を、俺に下さい』
そう、祈っていた。
けれど俺の祈りも空しく、母は俺が十歳の時儚くなった。臨終の場に、父はいなかった。
母亡き後、父は母の喪も明けぬうち、妾であった女を後妻に迎えている。
同時に俺は生家からも、祖父の屋敷からも離れ、軍に入隊した。
あれから二十年にもなるが、一度も生家の敷居は跨いでいない。