身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「いや、レーナに不名誉な噂が立つよりはいい! レーナがよければそうしよう!」
固まったままの私に、ブロードさんは尚も気を回す。
けれどそれは全くの見当違いだ。
「いえ、違うんです!」
私は屋敷に招かれたからと勘違いする程、自惚れてはいない。身の程はよく、理解している。
むしろその心配はブロードさんにこそ、当て嵌まるんじゃないだろうか? 私を置く事で、不快に思う女性はいないのだろうか。
「ご迷惑でなければ、私はブロードさんのお屋敷がいいです。ブロードさんのお屋敷に置いていただけたら、とても嬉しいです」
右も左も分からぬ世界。ブロードさんの親切心につけ込んでいる自覚はある。
けれど、誰かの世話にならなければ、暮らしていけない。本音を言えば同性といえど、見も知らぬ人達との共同生活は抵抗があった。
だから本心は、軍の女性用宿舎よりもどこよりも、ブロードさんのお屋敷の方がよかった。
「そうか! それなら俺の屋敷に暮らせばいい。迷惑などと、思う訳がない。その方が、ここでの生活習慣も教えやすい」
ブロードさんは、優しい笑顔で頷いた。本当に、ブロードさんには頭が下がった。