身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
「ありがとうございます。お世話になります」
「なに、うちは気のいい使用人ばかりだ。レーナもきっと、寛げる」
ブロードさんは気さくに、ぽんぽんっと私の頭を撫でた。
大きな手のひらの感触に、ドキリとした。
「……レーナ、儂が不安を煽るような物言いをしてしまって、すまんかったな」
私の今後が決まったところで、まさかドリアス牧師に頭を下げられてしまった。
「ドリアス牧師、頭を上げて下さい。ドリアス牧師は何も間違った事を言っていません。私の存在がランドーラ王国にとってデリケートだっていうのは、よく分かりましたから」
私は大慌てでドリアス牧師の手を取った。ドリアス牧師に謝ってもらうのは筋違いだ。
私の言葉に、ドリアス牧師はくしゃりと笑った。
「レーナ、こうして袖振り合うも多生の縁だ。何かあれば言ってくれ、必ず儂が力になる」
ドリアス牧師は重ねた私の手をグッと握り、なんとも心強い言葉をくれた。
「ありがとうございます」
日本でだって、これまでこんな言葉は、掛けて貰った事がなかった。握り合わさった手から、温もりが伝わる。けれど熱は手だけじゃない、胸もまた、じんわりと熱を持った。