身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい


「ブロード様、下の食堂なかなか美味かった……って、あぁああっ!!」

 な、なに?

 勢いよく扉が開くのと、栗色の巻き毛の少年が現れるのは同時だった。

 少年は私を視界にとらえると、くりくりの目を更に大きく見開いた。新緑の色の輝く瞳が、落っこちてしまいそうだと思った。

「女神様、目が覚めたんだね!? 俺、ブロード様の側近のアボットです!」

 アボットと名乗った少年は、笑顔で駆け寄ると、私の手を取ってブンブンと振った。

「はじめまして、私は怜那です」

 アボット君もまた、私を女神と信じて疑わない。告げる事で、この笑顔が曇ってしまったらと思えば、緊張した。
「だけどアボット君、私は女神様じゃないんです」

 アボット君は私の言葉に、一瞬キョトンとした顔をした。

「そうなの!? ならレーナは、俺の祈りが通じて、神様がブロード様の元に遣わしてくれたんだ!」
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