身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 けれど、心配は杞憂だった。
 アボット君は謎の言葉と共に、ニコニコと笑みを深くした。

 ホッと安堵に胸を撫で下ろしながら、同時に、こんなにも好意的に受け入れてもらえている状況が、信じられない思いだった。

「こらアボット、いつまでレーナの手を握っている気だ」

 ブロードさんにせっつかれ、アボット君はちょっと不満げに握手を解いた。

「あっ、そうそう! ブロード様、下の食堂テイクアウトもやってました! そろそろ最終オーダー近いんで、何か入用なら俺ひとっ走り行ってきますよ?」

「どうする、レーナは軽く食べられそうか?」

 聞き付けたブロードさんが私に水を向ける。

「いえ、私はお腹は空いていないのでいらないです」

 私は首を横に振った。
 昼食にお弁当を食べたきりのはずだった。だけど空腹は、まるで感じていなかった。

 正確には、空腹を感じる余裕がないというのが正しいような気がした。私を襲った非現実的な事象、知らない場所、初対面の面々。
 平常心を装いながら、心はどこか昂っていて、ずっと気が張っている。

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