身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「そうか。ならば今夜はもう休むといい」

 ブロードさんは特に追究をせず、ただ労わりの篭る目を私に向ける。

 そこにブロードさんの心遣いを、ひしひしと感じた。

「どれ、そろそろ儂もお暇するよ。ではな、レーナ」

 ひとつ頷いて、ドリアス牧師もソファから立ち上がった。

「ドリアス牧師、ありがとうございました」

 ドリアス牧師を見送れば、今度は私がブロードさんとアボット君に、寝室に見送られた。

「おやすみレーナ! 明日の朝食は食堂で一緒にとろうね!」

「はいアボット君、また明日」

 皆の優しさが、痛いくらい身に沁みた。

「レーナ、おやすみ」
「ブロードさん、おやすみなさい」

 そうして扉が閉ざされれば、のそのそ寝台に向かう。

 そのまま寝転がってはみたものの、心が浮足立って落ち着かない。眠りは、訪れそうになかった。

 おもむろに、頭上に右手を翳す。

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