身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい






「屋敷までは、そう遠くない。夕刻には着くだろう」

 翌日、私が乗馬が出来ないと知ったブロードさんは、わざわざ馬車を用立ててくれた。

 ブロードさんの手を借りて、車内に乗り込む。

「ブロードさん、私のせいですいません。それから本当にありがとうございます」

 馬車は四輪の箱型馬車で、ブロードさんとアボット君の愛馬が引く。御者台にはアボット君が座った。

「いいや、手荷物が大分膨れてきていたから、ちょうどよく馬車が手配できたのは良かった」

 初めて乗る馬車。
 正直に言えば、馬車の乗り心地はあまり快適ではない。自動車に比べれば、やはり揺れる。車輪が石礫を踏むたびにお尻が浮き、そして座面に打ち付けられる。

 けれど、車窓から移ろう景色景観には言葉をなくした。

 目にする全てが、ただただ美しかった。日本にいて、こんなにも美しい景色景観を目の当たりにした事などなかった。
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