身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい


***


 昨日、屋敷に到着してからも、レーナは少なくとも表面上は、とても落ち着いていた。

 けれど、見知らぬ地に身ひとつで投げ出されたその不安は、推し量って然るべきだ。

「すまないなレーナ。俺は出勤するが、何かあれば遠慮なく侍女でも家令でもいい、言ってくれ」

 本音を言えば、しばらくレーナに寄り添って過ごし、レーナの不安を払拭してやりたかった。

「ブロードさん、ありがとうございます。私の事は何も心配いりませんよ。お仕事頑張って下さい。気を付けていってらっしゃい」
「あぁ、いってくる」

 しかし俺の状況がそれを許してはくれず、俺は後ろ髪を引かれる思いで軍に足を向けた。


< 61 / 263 >

この作品をシェア

pagetop