身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
軍施設の中央棟の最上階、三階に俺の執務室はある。
いつも通り階段を上りきり、奥の一際重厚な扉を押し開け、……?
「……なんだ? 開かんな?」
扉を開けようとするのだが、扉は何かに阻まれているようで、僅かな隙間は出来たものの開けきる事が出来なかった。
「やめてっ! ブロード様押さないで下さい!! 今、荷物をずらしますんで!」
俺が無理矢理グイグイと扉を押していれば、中からアボットの焦った声が上がる。
押すなと言われ、一旦扉の引手から手を離す。
「ふぅ。ブロード様、ちょっとだけ待ってて下さい!」
隙間から覗き込もうとするが、数センチの隙間からは、中の様子がいまひとつ掴めない。
仕方なく中の様子を探る事は諦め、廊下で待つ事にする。
「アボット? 一体何をやっている?」
「いえね、思いのほか荷物が膨らんでしまって、……うんしょこらしょ! よいしょっ!!」
腕組みし、廊下の壁に寄り掛かっていれば、中からアボットの十六とは思えぬ爺くさい掛け声とガタガタとした物音が漏れ聞こえる。
「……歴代将軍の執務室だぞ。よもや破損したりしていないだろうな……」
思わず小さく呟いた。
俺は中の様子が気が気でなかった……。