身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい


「ブロード様! お待たせしました!!」

 アボットが額の汗を拭いながら、扉を全開に開け放つ。

「……やっと終わったか。それにしても一体何を……!! な、なんだこれは!?」

 執務室を覗き込み、愕然とした。

「いえね、最初は2~3枚をレーナにと思って、妹のおさがりの衣類なんかがないか母ちゃんに声を掛けたんですよ。そうしたら母ちゃんがあれもこれもって包み始めちまって、荷物が膨れ上がっちゃたんです。おかげで俺、早朝から家と軍施設を三往復もする羽目になっちゃいましたよ~」

 アボットはヘラヘラと笑いながら答えたが、目の前に積み上がる荷物の山は、とても笑い事で済まされる量ではない。

 リネン類の収納なんかに使用する麻の大袋がしめて4袋。その他、大振りの木箱が2箱積み上がっていた。

 これらが扉の前に積み上がり、俺の入室を妨げていたらしい。

「俺の妹は十三歳になりますが、レーナよりもうずっとガタイはいいんです。窮屈になって着れなくなった衣服や靴、軒並み持ってきました。他にも弟の絵本や児童書なんかはレーナの文字の勉強になるかと思って、全部持ってきました」
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