身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 ……だけどこの容貌は目立ち過ぎる。

 やはり髪だけでも染めようと、そう思った。

「そうだよ、髪も目も本物。ブロードさんのご厚意でご厄介になってるの。私はレーナ、皆は?」

 子供たちは目を見合わせて、私への対応に戸惑っているようだった。

 十中八九、子供たちは屋敷の使用人の子。主の賓客の私への対応を考えあぐねている。

 きっと、失礼のないようにと言い含められているのだ。

「ねぇえ? レーナ様はあたしたちなんかとこんな風に話してて、いいの?」

 遠慮がちに女の子の一人が切り出した。

 貴族の一部には、使用人や平民との過度の接触を厭わしく思う人たちもいるらしい。

 けれど私に言わせれば、こんな風に不必要に子供たちが遜る方が、余程に嘆かわしい状況だ。

「もちろん。私に様付けなんていらないよ。それに皆がお話ししてくれないと寂しいよ?」

 問い掛けた女の子が、弾けるように笑った。

「あたし、ユリーナ!」
「あー、ユリーナずるいぞ! 僕、マークだよ!」
「僕は、ヘンリーだよ」

 女の子の自己紹介を皮切りに、三人の子供たち全員の名前が聞けた。

「ユリーナ、マーク、ヘンリーね。私、この国の事を全然知らないの。もしよかったら、私にこの国の事を色々教えてくれないかな?」
「「「いいよ」」」

 子供たちは率先して、私にこの国の常識や生活習慣、あらゆる事を教えてくれた。

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