身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

 使用人塔には複数いる子供たちの為に、共有の勉強部屋が設えられていると聞いている。

「う~ん、勉強机はあるにはあるけど、全員共有の長机なんだ。あたし、覚えが悪くってなかなか理解できないんだ。それでヘンリーなんかが隣にいると、そんなの簡単だろうって、言うんだ。ヘンリーに悪気はないけど、あたしは悔しくて……。だから、ここでこっそりやってるの」

 なるほど、ヘンリーは優秀なんだ。

「それにヘンリーは教えてやるって言うくせに、答えを囁くしかしない。それじゃああたし、いつまで経っても出来ないままでしょう?」

 なるほど、ヘンリーは優秀だけど、人に教えるのは向いていないと見える。
 そう言えば、悟兄さんも学兄さんも勉強を教えるには向いてなかったっけ。

「ねぇレーナ、また、教えてくれる?」

「もちろん!!」

 ユリーナからの思いがけぬ頼みに、私は一も二もなく頷いた。
 こうして私は、会えば子供達の教師役を買って出るようになった。


< 70 / 263 >

この作品をシェア

pagetop