身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい
特に、今でこそ染色で艶を鈍くしている髪などは、元々は流れるような艶やかさだったのだ。レーナ自身が決断した事とはいえ、茶色に色を変えたそれを見る度に、俺の胸は切なく締め付けられた。
「あの、本当はここで家事仕事が出来たらいいなと思ってたんですけど、手伝いを申し出ても皆さん自分の仕事だからと、歯牙にもかけてもらえないって感じで」
続くレーナの言葉も、使用人にとっては当然の事。主の賓客に手伝わせるなど、瘴気の沙汰ではない。
「レーナは、元の世界では何か職に就いていたのか?」
自分から水を向けておきながら、レーナが働く姿というのは、まるで想像できなかった。
「いえ、私は医師を目指してずっと勉強していたんです。だから、恥ずかしながら働いた事はありません」
女だてらに医師だと!?
俺の問いには、予想だにしなかった衝撃の答えが返った。
ランドーラ王国に女性医師はいない。医師を介助する助手はほとんどが女性だが……ん!
「……そう言えば、軍医のクレイグスが助手を探していたな」