身代わり女神は、過保護な将軍様に愛されるのに忙しい

「ブロードさん！　その、助手になるには試験か何か必要ですか！？」

　けれどレーナは真剣そのものの表情で、前のめりに身を乗り出す。

「いや……試験はない。クレイグスが可否の判断はするだろうが……」
「どうか！　どうか、そのクレイグス医師に私を紹介していただけませんか！？　私に実務経験はありませんが、もし助手として採用されたなら精一杯努めます！」

　レーナはキラキラと目を輝かせた。その瞳の美しさが、俺の判断力を鈍らせる。

「うむ……。それならば明日、診療所に行ってみるか？」

　気付けば俺は、レーナの勢いに流されるまま頷いていた。

「ブロードさん！　ありがとうございます！！」

　これまでずっと、どこか遠慮がちにしていたレーナが、花が綻ぶように笑う。俺も釣られて笑っていた。

　俺もいい年で、それなりの女性経験も積んだつもりでいた。しかしレーナを前にすれば、まるで始めて恋を知ったかのように浮足立ち、まるで平常心でいられない。

「採用していただけたらいいなぁ」
　魅せられて、眩いレーナの一挙手一投足から目が離せない。

「……そうだな」

　こんなふうにレーナの笑顔が見られるのなら、紹介くらい造作もない事。そもそも向かぬと思えば、クレイグスの方から断るのだから。

　そんなふうに俺は、目の前のレーナの笑顔にばかり気を取られ、安直に考えてしまったのだ――。